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発行日 2011年6月15日
発行者 対人援助学会
編集長 団 士郎
【編集長から】
■東日本大震災後、二冊目のマガジンの発行だ。時が経つのは早い。しかし原発事故の復旧は遅々とした歩みのようで、私のような非科学技術系の人間には、本当のところ何処に向かっているのか、よく見えない。
今号で水野スウさんが「いのみら通信」の事を書いて、油断していたと書いているが、本当に、災害は忘れた頃にやってくるのだと思った。まさか原発がこんな事態を日本にもたらして、手に負えなくなるとは。
■東北各地の復興の歩み個別化はいよいよ明らかで、個々人に運不運があるように、再出発の道程も、本当にケースバイケースになっているようだ。じれったく、不本意な今を過ごす人も多いに違いない。
私は阪神大震災と東日本大震災と二度、大きな被災を脇で見ている巡り合わせになった。阪神大震災の時は、それがどういう事なのか、何が突きつけられているのかも分からない、とまどいと無力感の中にいた。しかし今回は少し違った。さっさと出来ることをすればいいと思ったのだ。その一つは速やかに届くルートの義援金の対応だった。早々と自分にふさわしい額や対象を決めて実行した。
その後は、自分のルーチンワークを粛々とこなして時を過ごした。続々と明らかになる様々な意見や取り組みに、心動くことがなかったわけではないが、それはそれの出来る人たちに委ねた。そして私は今、この後の地域社会における家族のことを考えている。被災地では物が壊され、失われただけではなく、価値観も崩された。そんなところで、元の暮らしをイメージして、復旧を目指すのは違うのではないかと思う。失ったところからの再出発には、価値観にも見直しがあっていいと思う。私の関わる分野なら、「家族」がそれだ。
息子や孫の学歴、進学問題。産業構造の近代化の中の、漁業と関連産業、地場産業の後継者問題。高齢化する小さな村や街の過疎や空洞化等。こんな前提を承認したまま、再びそこに向かって復旧を目指すのは違うだろう。だから私は、生まれかわらなければならない街に向かって、「家族」の新たな価値観の発信できたらと思っている。
何をどうするのかは、まだ協議段階だが、いずれ実現できると嬉しい。そのために今必要なのは、チャップリンの言うように、「勇気とサムマネー」だ。
対人援助学マガジン 第5号 | |
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■全ページ(145ページ) | |
■各ページ(執筆者) | |
表紙 | |
目次 | |
・執筆者@短信 | 執筆者全員 |
・知的障害者の労働現場 005 | 千葉 晃央 |
・社会臨床の視界 (5) | 中村 正 |
・ケアマネの出会った家族たち(5) | 木村 晃子 |
・街場の就活論 vol.5 ―新卒採用に今、何が起こっているのかー | 団 遊 |
・心理療法が始まるまで(5) | 藤 信子 |
・誌上ひとりワークショップ(前編) -家族援助は街のアパレル- | 岡田 隆介 |
・映画の中の子どもたち 5 「八日目の蝉」 | 川崎 二三彦 |
・子どもと家族と学校と (5) | 中島 弘美 |
・蟷螂の斧(とうろうのおの)-社会システム変化への介入-part1-第5回 | 団 士郎 |
・学校臨床の新展開 (5)「ののさん」のこと | 浦田 雅夫 |
・ポストモダンな学びのスケッチ- (5) 繋がりの中で見えてくるもの- | 北村 真也 |
・幼稚園の現場からV | 鶴谷 主一 |
・福祉系対人援助職養成の現場から (5) | 西川 友理 |
・我流子育て支援論 (5) | 河岸 由里子 |
・不妊治療現場の過去・現在・未来 5 | 荒木 晃子 |
・対人援助学&心理学の縦横無尽 (2) | サトウタツヤ |
・家族造形法の深度 (5) | 早樫 一男 |
・旅は道連れ、世は情け (5) お金と責任 | 村本 邦子 |
・きもちは言葉をさがしている 「紅茶の時間」とその周辺 第4話 | 水野 スウ |
・やくしまに暮らして 第四章 屋久島の祭り | 大野 睦 |
・お寺の社会性(参)―生臭坊主のつぶやきー | 竹中 尚文 |
・こころ日記ぼちぼち (2) | 脇野 千恵 |
松本 健輔 | |
・新連載ノーサイド 第一回 | 中村周平 |
・またまた長い編集後記 | 編集長&編集員 |