昨年度の第15回年次大会広島大会でもご案内したように、2024年度の第16回年次大会は、京都市で開催いたします。
京都は、明治初期の東京への遷都であらゆるものが流出し、荒廃したとされています。人口も減ったため、子どもの教育に力を入れようと考え、地元の住民がお金を出し合って64校もの番組小学校を作りました。国の小学校制度よりも3年もはやかったのです。番組小学校には町組合所、徴税、消防、警察なども併設され、コミュニティセンターの役割も担っていました。また、1970年代以降は精神科医療において「開放医療」の取り組み、そして誰もが地域での暮らしを継続できるよう「訪問支援」の取り組みを医療や福祉等の様々な職種が多職種連携をしてきた歴史があります。
いち早く地域に根ざした支援をおこなってきた京都でこのような機会を持つことは、これからのヒューマンサービスのより良い形での定着を考える上で大きなきっかけになることは間違いありません。対人援助領域の再生、そして魅力と伸びしろをたくさん持ち寄り、喪失と再生の歴史を持つ京都で、学び合いたいと思います。
2022年度からの3年間の研究テーマ「社会とともにある対人援助学~これまでとこれから」をテーマに、新潟、広島での地域課題から新たな価値観が醸成され、その土地に定着する姿を学んできました。今回は京都の長い歩みの継続を背景に、京都の「暮らしにねざした対人援助の知恵」に焦点を当て、各地での学びも融合し、やりがい、生きがいを基点に、集合知として再構築していく機会にしたいと思います。
戦後、対人援助の領域では法制度が整い、専門職資格の創設、国家資格化もされ、長年発達してきました。それが現在、その現場では、人材不足、スタッフの高齢化などが課題となっています。一方で、虐待などの事件をきっかけに、社会からは高いレベルでのヒューマンサービスを求める声はますます大きくなっています。しかし、予算増、人員増の目立った動きはなく、業務過多やバーンアウト等の問題なども継続して話題になっています。
そこで、対人援助学会京都大会では、今働く私たちが「これからもはたらきたい!」と思える環境を整え、そして次世代に魅力ある領域として訴えるにはどうすればよいのか?について、京都の長い歴史も視野に入れて考えます。継続ができて、やりがいを感じ、その実践がねづくためには、どんな価値や要素や知識が必要でしょうか?変化のための小さな一歩とは何か?について知恵を出し合いたいと思います。
住民による支援の創出、利用者の立場を尊重した支援が定着してきた京都で、どんな価値を加え、取り組みがいかにこの土地に根ざしてきたのか?について考え、対話を深めていくことは、私たちの今後の実践にもつながる意義深いことと思われます。
学会がより社会に貢献する契機となるよう、創造的で、未来志向な大会にしたいと願っています。
※次の場合には大会を中止又は延期しますので、参加者にメール等でお知らせします。
①特別警報の発令等により、会場校の所在地に避難指示を発令した場合(暴風雨、水害、地震等の危険が差し迫っている状態)。 ②その他の不測の事態等、緊急事態の発生時。
11月2日(土) 12:00~12:30 |
大会受付 |
12:00~18:00 |
ポスターセッション・ポスター掲示開始 団士郎「木陰の物語」パネル漫画展 (どちらも時間中はいつでも掲示内容をご覧いただけます) |
12:45~14:30 |
特別記念講演 「対人援助者を生きることとメンタライジング」 対人援助学会第16回大会、京都大会を飾る記念講演には、先駆的に精神科病院における開放医療に取り組んでこられたいわくら病院院長の崔炯仁(チェ・ヒョンイン)先生をお迎えします。 1970年に理想に燃える6人の若手医師による立ち上がりによってはじまった開放医療を巡る病院改革。全国に先駆けて開放医療を進めて行った原動力とは何か、今もその薫陶を受けた後進の援助職たちが継承する支援実践で培われた対人援助のアイデンティティから学ぶ意義は大きいと考えます。現在のいわくら病院では、認知症疾患関連病棟を除いて日中の開放病棟が実現しており、入院者は自由に病院内を行き来し、地域でもその理解と協力が進んでいます。しかし、一方では社会には根強い差別や偏見が残り、分厚い壁となって立ちはだかっているのも事実です。格差や排除が蔓延する暴力的な社会環境にあって、対人援助も国家政策による財政的制限や組織経営に翻弄されながら、日々の困難や多忙に追われ、常にバーンアウトと隣り合わせにあります。このような現状を打破するためにも、「『人が人として生きる』というあたりまえのことを実践するために、幾度となく流された、汗と涙。そして得られたのは、すべての苦労を吹き飛ばすほどの喜びと笑顔」(いわくら病院HP)といういわくら病院の支援実践の歩みから学ぶことは、現代の対人援助に携わる私たちに「対人援助の生きがい・やりがい」具現化のために多くの示唆を与えてくれるでしょう。また講師である崔先生は日本におけるメンタライゼーションのトップランナーのお一人でもあり、ご講演ではトラウマ回復の臨床から得た知見として「ケアする人のケア」の具体的事例や可能性についても言及頂く予定です。 講師:崔炯仁(チェ・ヒョンイン)
いわくら病院院長/日本メンタライゼーション研究会会長 |
14:40~16:20 |
理事会企画Ⅰ 「多様な学びの創造 -動機づけを生み出す仕掛けを探る―」 発表者:河村昌樹(京都府るり渓少年自然の家)、山本昌平(大阪市総合教育センター)、千葉晃央(京都光華女子大学)、大谷多加志(京都光華女子大学) 子どもたちが自主性をもって参加し、楽しみながら、学び、成長していくプログラムが各地で行われています。現在、インバウンド需要でも注目されている「忍者」ですが、そのずっと以前から、子どもを対象にした「忍者体験キャンプ」は行われてきました。仲間とともに自然や文化にふれ、五感も用いて、行動力・生活力・創造力・判断力を養う人気企画として30年以上継続しています。そこにある仕掛けは何なのか?どういったメカニズムがあるのか?を河村氏をお招きして考えます。一方、山本氏は中学校でのプロジェクト学習へのe-スポーツの導入など、多様な学びに向けた取り組みを進めるとともに、不登校傾向の子どもに対する職業体験機会の確保や複数担任制の実施など、教職員も含めた持続可能な学びの場づくりを試みています。これまでの取り組みの紹介を通して、多様な学びを生み、維持するための仕掛けをともに探ります。発表者二人の取り組みは、これまでもあったプログラムに変化を追加して、本来ある楽しみをさらに広げる活動といえます。その実践から、対人援助におけるたくさん仕掛けを私たちは学びたいと思います。 |
16:30~18:00 |
公募企画ワークショップⅠ 【分科会1】 「バザールカフェ -ばらばらだけど共に生きる場を作る-」 主発表者:松浦千恵(バザールカフェ代表スタッフ・ソーシャルワーカー) 概要:バザールカフェは、カフェとして存在しており、誰もが安心して参加できる地域の居場所として運営され、在日外国人や、病気・障害を抱えている人など社会的にマイノリティとされる人たちの就労や交流の場にもなっている。何らかのレッテルを貼られる不安や障壁を取り除き、出入り自由なカフェとしてナチュラルなオープンダイアローグが成り立つ関係性、環境が特色ともいえる。未来の対人援助のあるべき姿を共に話し合い、紡ぎ出す機会としたい。 【分科会2】 「歴史-社会-個人をつなぐ対人援助を目指して:在日コリアンに対する心理臨床実践から」 主発表者:朴希沙(立命館大学人間科学研究科後期博士課程、在日コリアンカウンセリング&コミュニティセンター) 連名発表者:丸一俊介(在日コリアンカウンセリング&コミュニティセンター長、障害福祉サービス事業所ほっとハウス所長) 概要:本ワークショップでは、対人援助において「人」を理解する際に、歴史―社会―個人をつなぎ、統合的な視点を持つとはどのようなことかを参加者と共に探っていくことを目的とする。そのために、発表者たちが主催している在日コリアンのためのカウンセリング機関、在日コリアンカウンセリング&コミュニティセンター(以下、ZAC)での臨床実践を取り上げる。歴史―社会―個人をつなぐ対人援助としてZACではどのような心理臨床が模索されているのかを提示する。 |
18:15~ |
情報交流会 ※事前申込はありません。参加費は当日会場で御支払ください。 |
11月3日(日) 9:00~15:00 |
ポスターセッション 団士郎「木陰の物語」パネル漫画展 (どちらも時間中はいつでも掲示内容をご覧いただけます) |
9:00~10:30 | ポスターセッション質疑応答時間 |
10:40~12:10 | 理事会企画Ⅱ 「支援者はいかに精神的健康を回復しているか」 発表者:吉村拓美(京都府福知山児童相談所)、園 博伸(フリーランス、元滋賀県児童相談所)、乾 信一郎(奈良県高田こども家庭相談センター) 対談者:坂口伊都(家族関係支援 相談援助 憩都) 対人援助職は、誰でもモチベーションを保つことが難しくなる時がある。対人援助現場では、支援関係の中で得られる「共感満足」や当事者の回復から支援者もエネルギーが得られる「代理レジリエンス」があるといわれています。また、それとともに支援関係の中のジレンマである「共感性疲弊」がつきものであり、支援者自身だけでなく同僚や関係機関のモチベーション・マネージメントに頭を悩ませる方は多い。 「僕らの家族支援研究会(BKS)」の「僕らの」には、<援助者として主体性を取り戻す共同体>にできたらという希望が込められており、関西圏の児童相談所や近接領域の現場職員の有志が協力し合い研究会活動を重ねている。BKSでは、全員が〈教えてもらう人〉で、〈教える人〉というコンセプトの基で、安全な対話を重視しながら、新人からベテランまで様々な体験や想いを共有し、チャレンジできる場を目指している。その実践を通して、援助者の意欲を高め、援助者支援に繋げていく可能性について考える。 |
12:10~13:10 | 昼休憩 |
13:10~14:40 | 公募企画ワークショップⅡ 【分科会1】 「言葉が再び届いた日 ~ヨミトリ君プロジェクトは意思疎通の扉を開く」 主発表者:高木久美子(東海地区遷延性意識障害者と家族の会「ひまわり」) 連名発表者:岡田浩 (一般社団法人愛知情報教育支援協会)、戸國真佐子(立命館大学大学院)、山口哲史(全国遷延性意識障害者・家族の会 関西ブロック)、山口美千子(全国遷延性意識障害者・家族の会 関西ブロック)、山口哲生 (全国遷延性意識障害者・家族の会 関西ブロック) 概要:発表者の山口哲史は突然心肺停止となり、全身麻痺、人工呼吸器装着の寝たきり、長期の脳死状態という診断を受けた。しかし、その後微小荷重を認識して意思疎通を支援するデバイス「ヨミトリ君」を知り、哲史は指筆談とヨミトリ君の操作に成功。哲史の指筆談での言葉、ヨミトリ君操作のデモを通し、延性意識障害者、難病の患者を中心に閉じ込め症候群(LIS)の状態にある人の支援、および重度障害者の意思疎通の取り組みの意義と可能性を伝えたい。参加者による「指筆談に挑戦」の時間も設けたい。 【分科会2】 「可視化を用いた自己決定支援の手法と意義 ~対人援助シーンでのグラフィック・ファシリテーション活用の事例から」 主発表者:奥野美里(株式会社コクリエ) 連名発表者:松尾智晶(京都産業大学) 概要:発表者は、まちづくりやオープンイノベーションなどの現場で、話し合いを文字やイラスト、図解などで可視化し、対話や気づきを深めるグラフィック・ファシリテーションを生業としている。一方でその手法を1on1などのセッションで自己決定支援での活用を試みている。その手法を紹介し、参加者同士で行い、「書かないセッションとどのような違いがあったのか」等について意見交換を行う。またキャリア・デザイン分野の視点で松尾千晶氏から問いを投げかけてもらい、自己決定への支援について考える。 |
14:50~15:40 | 全体会(総会) |
質疑応答時間:11月3日(日)9:00~10:30
掲示期間:11月2日(土)12:00~18:00・11月3日(日)9:00~15:00
No. | タイトル | 発表者 |
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1 | 実用性向上を目的とした指筆談(指談)デバイス改良と介護現場への適用 | 岡田 浩 |
2 | 農村地域に社会的企業として経営する共働学舎新得農場 ―さまざまな人たちと共に働き生活する場所― |
金 玉禮 |
3 | 多領域から考えるマイクロアグレッション―依存症・障害福祉・部落研究の視点からー | 戸國 真佐子 |
4 | 子どもの遊びと子育て当事者の癒しが両立するイベント開催とその効果検証に向けた取り組み | 伊東 美智子 |
5 | 明治期の子どもにおける健康とは―「高山氏小学生徒心得巻二」養生乃部の現代語訳からみる養生観― | 笹谷 絵里 |
6 | 日本における安産祈願と腹帯の関係―奈良県帯解寺の事例から― | 笹谷 絵里 |
7 | 在日ベトナム人労働者への心理支援の検討 | 高 史行 |
8 | 知的障害のあるグループホーム利用者に対する行動的QOL向上を目指した支援 | 寺川 和志 |
9 | 発達障害をもつ子どもの行動の拡大を援助する働きかけ―障害児通所施設での支援― | 太田 光美 |
10 | 「介護老人保健施設における入居中高齢者の退居後の生活の場を選択する家族の認識」 | 岸沖 美織 |
11 | ACT・ライフレビューに基づいた介入による高齢者の行動的QOL拡大の検討 | 感應 菜摘美 |
12 | 障害者福祉施設におけるスタッフのポジティブな介入が利用者の行動的QOLおよびスタッフ自身のワーク・エンゲイジメントに与える効果 | 杉山 朝太郎 |
13 | 特別支援学校教員の専門性の拡大に向けた取り組み-子どもの動作の見立てシートの活用- | 土田 菜穂 |
14 | 心理支援ツールを活用した子育て応援プログラム――デザイン思考からの親子関係再構築支援―― ※ポスターセッションの一環として「心理支援ツールのミニ体験会―気持ちの視覚化ツール「いろいろな気持ち―」も行われます。 |
中村 泰子 |
15 | 心理支援ツールを活用した親子プログラムー―児童相談所における親子関係再構築支援―― ※ポスターセッションの一環として「心理支援ツールのミニ体験会―気持ちの視覚化ツール「いろいろな気持ち―」も行われます。 |
中村 泰子 |
16 | セツルメントにおける保育と音楽の研究 | 迫 共 |
17 | ある4歳児の音楽表現の特徴と変化 | 山下 世史佳 |
開催日時 | タイトル | 企画者 |
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11月2日(土)16:30~18:00 分科会1 |
バザールカフェ -ばらばらだけど共に生きる場を作る- | 松浦千恵(バザールカフェ代表スタッフ・ソーシャルワーカー) |
11月2日(土)16:30~18:00 分科会2 |
歴史-社会-個人をつなぐ対人援助を目指して:在日コリアンに対する心理臨床実践から | 朴希沙(立命館大学人間科学研究科後期博士課程、在日コリアンカウンセリング&コミュニティセンター) |
11月3日(日)13:10~14:40 分科会1 |
言葉が再び届いた日 ~ヨミトリ君プロジェクトは意思疎通の扉を開く | 高木久美子(東海地区遷延性意識障害者と家族の会「ひまわり」) |
11月3日(日)13:10~14:40 分科会2 |
可視化を用いた自己決定支援の手法と意義 ~対人援助シーンでのグラフィック・ファシリテーション活用の事例から | 奥野美里(株式会社コクリエ) |
企画ワークショップを以下のとおり募集します。発表者は申込及び抄録の提出が必要となります。申込多数となった場合は理事会で選考させていただきます。※ワークショップの採択には審査があります。
申込方法:下記の内容を年次大会事務局宛にメールでお送りください(抄録も同宛先)。
○ 主発表者(学会員に限る)、連名発表者、所属先
○ タイトル
○ 企画概要(800字程度)
○ 希望時間枠(プログラム概要から、企画ワークショップ1か2のいずれかの時間を選択)
★申込締め切り:2024年9月14日(土)
抄録提出期限:2024年10月2日(水)
(書式はホームページよりダウンロードしてください)
ポスターセッション発表者を以下のとおり募集します。採択には審査があります。申込多数となった場合は理事会で選考させていただく場合があります。
申込方法:下記の内容を年次大会事務局宛にメールでお送りください。
○ 主発表者(学会員に限る)、連名発表者、所属先
○ タイトル
○ 抄録(書式はホームページよりダウンロードしてください)
ポスターセッション質疑応答時間(在席責任時間)は、11月3日(日)9:00~10:30です。参加者からの質疑応答に応えていただくことで、正式発表となります。主発表者または連名発表者での対応をお願いします。
・ポスターの掲示スペースは、目安として「A4横置き」で18枚程度です。
・ポスターの最上部に題目、名前(筆頭発表者に○を付けてください)、および所属を明示してください。
・著作権確認書の提出は必要ございません。ただし、著作権の帰属を承諾の上、お申込みください。対人援助学会では、抄録原稿を提出された時点で承諸したものとして処理しますのでご了解ください。提出される論文の著作権に関し、複製権・公衆送信権等の財産的権利はすべて対人援助学会に帰属することを併せてご了解ください。
★申込締め切り及び抄録提出期限:2024年10月2日(水)
抄録の書式説明 | 抄録テンプレート |